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2020年5月28日木曜日

+62 掲載 「インドネシア居残り交換日記 2020年3月15日〜5月24日 新しい日常」

旧知の池田華子編集長のお誘いを受け寄稿しました。呆れるほどの遅筆でしたが、無事提出できて一安心。餅は餅屋で、やはり編集はお任せするに限ります。

https://plus62.co.id/archives/17354

ちなみにラマダン中に減ったはずの体重、さっき測ってみたら元に戻りつつあり、ヤバい。こちらは「新しい日常」ならぬ「新しい体重」で行きたいんだけどなあ...


2020年4月12日日曜日

記事翻訳 コロナウイルスを否定していたインドネシアは今迫り来る災害に直面しつつあるかもしれない

(フェイスブック投稿と同内容)

2020年4月11日現在、インドネシアに残留している日本人で現在の事態の深刻さを理解していない人は極めて稀と認識していますが、それが同じくコロナウイルス危機下にある日本にまで伝わっているのか、若干疑問がありました。
拙い訳で恥ずかしいですが、以下豪州メルボルン大学の二人の研究者による論考を日本語に訳したので、危機の深刻さを理解する一助になれば幸いです。誤訳のご指摘、大大歓迎です。
なお、英語の原文はこちら。私が最初に閲覧した時は、太字と下線での強調部分が多すぎてやや煽り気味ではないかと感じました。現在は下線のみのようです。また今回改めて日本語に訳してみると、それほど激烈でもない感じで、自分の英語力の弱さを痛感しました。

以下の日本語訳はインドネシアを代表する英語紙THE JAKARTA POST に転載された文章から訳しています。

コロナウイルスを否定していたインドネシアは今迫り来る災害に直面しつつあるかもしれない
(ティム・リンゼイ及びティム・マン)
インドネシアがCOVID-19の感染爆発をうまく処理していると考える人はほとんどいない。
3月上旬まで政府は感染症の症例はなかったと主張し、常軌を逸した保健大臣であるTerawan Agus Putrantoは祈りのおかげであるとした。内務大臣はもやしとブロッコリーをもっと食べるように大衆に促し、ジョコ・ウィドド大統領(ジョコウィ)は伝統的な薬草療法であるジャムウを賛美していた。
政府は否定の中にいた。テラワン氏は、ハーバード大学の研究者による、インドネシアには報告されていない症例があったはずだという内容の報告書を「侮辱」として退けた。最近でも先日の金曜日には、別の大臣がウイルスは熱帯気候で生き残れないとまだ主張していた。
ジョコウィは明白に、ウイルスが貿易・投資・観光にもたらす脅威について多くを心配していた。多数の国が厳しい旅行制限を課していた2月に、彼は観光客を引き付けるために最大30%の割引を提供することを計画した。政府は観光促進の為にソーシャルメディア・インフルエンサーへの謝礼として約800万豪ドルを割り当てさえした。
3月2日、インドネシアはようやくCOVID-19がこの群島に到達したことを認めた。多くの人が疑ったように、ジョコウィは政府が「パニックを回避するために」大衆からの情報を差し控えたと認めた。
そしてようやく行動を開始した。政府は大集会を禁止し、いわゆる「大規模な社会的制限」を導入し、外国人の入国を禁止した。国内では悪名高い過密で不健康な刑務所から3万人の囚人を釈放し、医療ニーズ、社会的支援、中小企業の救援にさらに400億豪ドルを支出すると発表した。
先週、ジョコウィはすぐに引っ込めたものの、(戒厳令に近い)民事緊急事態宣言のアイデアをもてあそんだ。
状況はどれほど悪いのか?
ほとんどのインドネシア人が推測していたことをジョコウィが最終的に認めた理由について、理解することは難しくないが、依然我々はすべての事実を掴んでいるわけではない。
インドネシアでは2,400人以上の感染者と209人の死亡が記録されているが、これらの数値は人口約2億7千万人の国のわずかなサンプルである11,500件の検査に基づいている。
多くの症例の兆候が見られ、またその死亡は検知されてない。ロイターはジャカルタの公園墓地管理局データを調査し、同州では4,400人の埋葬が3月におこなわれたこと、これは通常より40%増加した数値であることを明らかにした。
しかし、控えめな公式発表の数値でさえ致死率は9%であり、検査が不十分だったことが理由だとしても、世界で最も高い致死率の国のひとつだ。
いずれにせよ、インドネシア大学の科学者たちは、より厳格な対策が早急に開始されない場合、状況がさらに悪化し、4月末までに24万人が死亡する可能性があると予測している。
悲劇的なことに、広範囲にわたる検査、適切な治療、そして強力で効果的な社会的隔離措置が速やかにおこなわれる可能性は低い。
政府は保健体制を大急ぎで準備しているが、これは不可能な仕事のようだ。インドネシアでは1万人に対し医師は4人だけ、病院のベッド数も同じく12床であり、10万人あたりの集中治療ベッド数は3床未満である。これらのレベルは、世界保健機関またはアジア太平洋地域の基準を大幅に下回っている。
人工呼吸器の極端な不足は、特に地方においては、本来なら避けられるはずの多くの死をもたらすだろう。
COVID-19の専門病院がジャカルタに開設され、ガラン島にある旧ベトナム難民キャンプが別の専門病院として改装中である。
しかし、数十万人が感染しているならば、こうした専門病院はもっと多く必要になるだろう、とりわけインドネシアは呼吸器疾患の危険地帯なのだから。インドネシアは世界で男性の喫煙者の割合が最も高い国の1つであり、5つの主要な死因はすべてタバコ関連である。保健省と医師の間の悪い関係も助けにはならない。
医療従事者のための防護服も欠乏が深刻な状態だ。彼らの中にはレインコートで働くよう言われている人すらいる。これまでに少なくとも24人の医師が死亡しており、これは記録されている死者数の約11%にあたる。
インドネシアのような人口過密国では、規則に対する自由放任の態度と警察への賄賂の伝統があるため、社会的な隔離さえも非常に困難になる。しかも、労働人口の最大70%がインフォーマル・セクターで働いており、多くの人がその日暮らしをしている。自宅で仕事をすることは、彼らにとって選択肢にはならないだろう。
さらに悪いことには、5月23日に行われるイスラム教徒の断食明け大祭のお祝いに向けて、数百万人が伝統的な帰省を準備している。昨年のこの期間、1800万人以上のインドネシア人が移動した。破滅的な感染拡大を引き起こす引き金となる、このような他のイベントを想像することは困難である。
ジョコウィの多くの均衡的な行動
ジョコウィは断食明け大祭時の帰省の危険性について警告はしているが、それを防ぐために厳格な対策をとることは躊躇しているようだ。
ジョコウィは勝てない状況下にある。彼が帰省を禁止した場合、彼を不誠実なイスラム教徒であるかのように見せたい政敵たちの批判の標的になるだろう。逆に彼が帰省を禁止しなければ、何百万人もの国民をウイルスにさらすものだとして攻撃される。
すでに知名度の高いジャカルタ首都特別州知事アニエス・バスウェダンは、ジョコウィの今回の危機への対応を批判し、ウイルスの蔓延を食い止めるためのより厳格な対策を要求している。
しかし、ジョコウィは検疫や全面的な帰省の禁止ではなく、「大規模な社会的制限」を選択して、またもや公衆衛生よりも経済的配慮を重視しているようだ。
厳格な領域検疫や封鎖は、間違いなく経済活動を抑制する。さらには、2018年の保険検疫法に基づき、領域検疫がおこなわれる地域において政府は全ての住民の基本的なニーズに責任を持つため、莫大な費用を負担することになる。
コロナウイルスが、これまで決して水面下にあるとは言えなかった反中国というヘイトスピーチの爆発を引き起こしていることもジョコウィに関係する。ネット上の荒らし屋は、中国人がウイルスをインドネシアに持ちこみ、裕福な彼ら中国人は自らの安全のためシンガポールへ逃げたと非難している。インドネシアの多くの場所で、中国人労働者に対する暴力的な抗議行動が既に行われている。
ジョコウィは元ジャカルタ州知事である中国系キリスト教徒のバスキ・チャハヤ・プルナマと密接な関係にあり、中国からの投資を熱望する大統領の態度と相まって、もし国民の間に反中国感情がさらに高まれば、彼はそのことで攻撃されるだろう。
ジョコウィは現在、危機管理を支援するために警察・国軍・情報機関を動かしている。これは、ジョコウィ体制を特徴づけている、静かに進行している安全保障化と一致しており、これらの機関はより大きな足がかりを得るためにあらゆる機会を利用する。
が、それはまた、ジョコウィがCOVID-19が彼にもたらすかもしれない政治的危険性を認識していることを示唆している。憂慮すべきことに、警察はウイルスの蔓延を防ぐのに役立つであろう行動をとるよりも、大統領に対するネット批評家を追い払うことに関心があるようだ。
インドネシア政府は混乱の渦中にあり、それは概ね自ら作り上げたものだ。悲しいことに、指導者たちが明白な物事を否定して過ごした数ヶ月の為に、インドネシアの人々は非常に高い代償を払うだろう。
(訳注;原文は4月8日午前3時にインドネシア西部時間にアップされ、翌日9日午前7時半に一部の数値が修正された。よって感染者数及び死者数等はその時点での数値であるが、そのまま訳している。4月11日夜現在、インドネシアの公式発表での感染者数は3842人、死亡者数は327人となっている。